ヤングタイマー&ネオヤングタイマーに乗ろう/第11回/スペシャルショップ編
2021/07/17 11:21:12
ヤングタイマー&ネオヤングタイマーに乗ろう/第11回 スペシャルショップ販売車/ポルシェ編
---------------------------------------------------
はじめに/ヤングタイマーとは?
ヤングタイマーは、初度登録から15〜30年ほど経過しているクルマのことで、一番旧いモノで'80年代後半に発売された国内外の車両といったイメージです。この頃に生産されたクルマといえば、デザイン性の高さや品質のよさをアドバンテージとしていました。いま見てもカッコよく、しかも実用性が高くって安価な点が特徴だといえます。
そして、ネオヤングタイマーは、これからヤングタイマーになる「予備軍」のことで、7年落ちぐらいまでのクルマを含んでいます。この7年落ちというのがキモなので、ちょっと説明しますと、いま輸入車の正規ディーラーが販売している認定中古車および厳しい基準をクリアしたコンディションがいいユーズドカーの中には7年落ちで走行距離が7万km前後(いわゆる7年7万km)という車両が存在しており、ひと昔前のような状況(中古車市況)になっているのですね。当然のごとく、それらのクルマはリーズナブルなプライスで流通しているので、ビギナーにも買いやすく、趣味性が強いクルマに関してはセカンドカーになるともいえるのでした。
本特集では、ヤングタイマー/ネオヤングタイマーならではといえるそれらの魅力に着目し、毎月、車 市場 名車館 編集長の筆者(高桑)が気になるヤングタイマー/ネオヤングタイマーをピックアップ。記事をアップしていきます。
---------------------------------------------------
「ヤングタイマー/ネオヤングタイマー」を「趣味車」もしくは「実用車」として楽しむ際の注意点について
初度登録から7〜30年ほど経過しているので、やはり、ヤングタイマー/ネオヤングタイマーも年々良質なクルマが減ってきています。正規ディーラー/スペシャルショップ側の立場(視点)から申し上げると、車種によっては販売車両の仕入れが困難な状況になってきているわけです。
クルマに詳しくない方の中には、ヤングタイマー/ネオヤングタイマーを最新の国産車を扱うような気軽な感覚で足として使用し、保管やメンテナンスも疎かにして、わずか数年で廃車にしてしまう心無い人もいます。ヤングタイマー/ネオヤングタイマーに対する正しい知識とクルマへの愛情があってこそ「旧くても楽しめる」というカーライフ&記事が成立するので、これからヤングタイマー/ネオヤングタイマーをゲットしようと思っている方は少しだけ心して購入に臨んでください。
---------------------------------------------------
ポルシェ911(タイプ996)とは?
タイプ996は、911シリーズ初の水冷エンジン搭載車として1997年に導入されました。クラシックなボディは大型化され、シャシーはさらなる進化を遂げました。
911シリーズのアイデンティティとなっている水平対向6気筒エンジンが水冷化され、新世代に入ったことを声高にアピールするかのように、ポルシェはタイプ996のエクステリアデザインも刷新しました。もちろん、基本的なフォルムこそ911シリーズの伝統に則ってデザインされていましたが、お馴染みの丸型ヘッドランプが廃止され、986型ボクスターと共通となる涙目タイプのモノを採用することになりました。これは、メインビーム、ハイビーム、ポジションランプ、ウインカー、ヘッドランプウォッシャーなどの機能をひとつのケースの中に集約したものです。そして、左右に大きく張り出したフェンダーを特徴とする独特のカエルっぽいスタイリングではなく、いかにも空力がよさそうな流麗なボディスタイルを纏い、タイプ996は市場に投入されたのです。
いまでこそタイプ996と986型ボクスターのコストダウンを目的とした部品共用をポルシェの英断だったと言うこともできますが、タイプ996のデビュー当初はポルシェ自らが敢行した911ブランドの陳腐化を酷評する声が大勢を占め、数多くの911ファンが最後の空冷911となったタイプ993の魅力を再考するに至ったわけです。そのような流れの中で空冷911神話が完成し、タイプ996が不遇の扱いを受ける要因となりましたが、近年における水冷911人気のひとつの起点となったのがタイプ996であったことは疑う余地がない事実なので、当パートではタイプ996は不当に低く評価されているものの、実は後世に遺すべき名車であるという観点で話を進めていくことにします。
ポルシェのエントリーモデルとして登場した986型ボクスターとヘッドランプをはじめとするさまざまな部品を共用したことでタイプ996の評価が不当に低くなったことは既述したとおりです。ここでもう少しだけ、そちら方向のネガティブな話を記述させていただきます。インテリアにおいても986型ボクスターとの類似性が強くみられるようになり、タイプ993以上に樹脂製パーツの存在が目立つようにもなりました。そのため、熱心な911フリークから否定的な意見が噴出するに至ったといえます。
エクステリアデザインにおける没個性化やインテリアにおける911らしさの欠如といったことがタイプ996の低評価につながり、現役時代の悪い印象をユーズドカーとなった今でも払拭することができずにタイプ996のユーズドカーは総じて安価にて流通しています。しかし、エンジンの水冷化によってもたらされた扱いやすさや上質な走りは911ビギナーにとって最良のものだといえます。そういったこともあり、実はタイプ996が現在最もコストパフォーマンスが高いユーズド911だと解釈してもいいわけです。911というスポーツカー界のフラッグシップは、経費削減が求められた時代の産物であっても第一線級のアスリートなのです。
水冷化された水平対向6気筒エンジンの排気量が3.4リッターだった2001年式までのモデルがいわゆる前期型で、排気量が3.6リッターとなった2002年式以降のモデルが後期型となります。リーズナブルなプライスで販売されているタイプ996のグレードを見ていくと、ティプトロ仕様の2輪駆動カレラが最も多く、4輪駆動のカレラ4を狙うこともできる市況となっています。また、ターボルックとフルタイム4WDシステムを特長とするカレラ4Sも狙える点がポイントです。多様なグレードの中から、自分に合った一台を選び出せるでしょう。なお、1998〜2000年式はインテリアがプラスチッキーですが、2001年式から質感が向上しています。エンジンフードの開閉機構が電磁式になっているのも2001年式からなので、ショップの店頭でしっかり作動するかチェックしてみてください。
ボディカラー別価格傾向はボクスターと同じですが、タイプ996の場合はホワイト、ブラック、シルバーが大半なので、人気がある上記3色とそれ以外の塗装色といった感じで大別でき、人気色と不人気色の間には価格差があるといえます。トランスミッションに関してはティプトロが主流で、僅少となっている6段MT仕様をユーズドカーマーケット内で見つけるのは非常に困難です。MT仕様は流通数が少ないため、プレミア性が高く、ティプトロ仕様のプライスよりも高価です。
タイプ996に搭載された水冷エンジンは丈夫で壊れにくく、空冷ポルシェのようにオイル漏れが付き物といった厄介なものでもありません。オイルのにじみぐらいは発生しますが、すぐさま大きなトラブルにつながるわけではないので、過度のにじみでなければ心配しなくていいでしょう。ということで、購入前にチェックしておきたいポイントは、冷却水が漏れていないか、内外装の使用感が年式相応/走行距離相応かといったことぐらいです。
冷却水の漏れはクーラントのサブタンクが劣化(=黄色くなっていたら交換のサイン)することで発生します。圧力がかかった際に漏れ始めることがあるので、エンジンをかけてみて、漏れた冷却水が熱くなった金属部分に触れて焼けるニオイがしたり、フロアに冷却水がポタポタ垂れてきたら要注意です。
また、ハイスピードクルージングを行なった際にフロント部のラジエターコアに物体がヒットし、破損しているケースがあるので、ここも目視でしっかりチェックしておくといいでしょう。インターミディエイトシャフトの破損およびシリンダーヘッドにクラックが入り、冷却水がエンジン内に浸入するケースについては986型ボクスターと同じように心配し過ぎる必要はないので、ポルシェ博士の理想のひとつが高度なエンジニアリングによって具現化されているタイプ996を気軽にチョイスしてみてほしいです。
平素の足として普通に乗れる点がタイプ996の特長なので、リーズナブルな快速GTカーやビジネスエクスプレスとして、いまが底値だといえる優等生的なタイプ996を臆することなく使い倒してください。現車はGT3仕様なので、見た目もカッコイイですよ。
■ポルシェ911 996カレラ tipS GT3 Ver
車両本体価格:298万円
年式:2003年
ボディカラー:バサルトブラック
内装カラー:ブラック
車検:--年--月
走行距離:6万9000km
修復歴:なし
特記事項:M030オプションスポーツシャーシ、ビルシュタイン、純正GT3エアロ、19インチAW、HDDナビ、地デジ、ETC。
■販売店舗
Figo paso do Ble(フィーゴ・パソ・ド・ブレ)
住所:埼玉県上尾市本町3-8-12
TEL:048-772-8549
営業時間:10:30〜20:00
定休日:水曜日
https://figo.ne.jp/
文&写真/車 市場 名車館 編集長:高桑秀典
|